被相続人の死亡後の相談で、相続財産はどのように調査して探せばいいか教えて? と聞かれることがあります。

特に、相続人が被相続人と同居していなかった場合、相続財産がどれくらいあるのか正確に把握することは困難です。

そこで相続財産の調査方法を説明いたします。

確定申告書・職歴等の確認

被相続人の方が確定申告していた場合は、2~3年分の確定申告書がないか探しましょう

白色申告の場合は、決算書等はないことから、資産関係は、はっきりしませんが、それでも、被相続人の財産・債務を確認する手がかりになります。

青色申告の場合は、財産・債務を確認する有益な資料になります。

また、被相続人の履歴(職歴、居住場所等)についてまとめてみると、財産・債務を探す手助けになります。

さらに、被相続人の住居にある賃貸借契約書、融資契約書等の契約書、通帳・権利書・保険証書などの権利に関する書類、郵便でくる請求書・クレジットカード等の明細・金融機関や証券会社からの通知・固定資産税等税金の納付書等も集めて下さい。

最近は、金融機関、証券会社等の関係の処理がインターネットで行われることも多いことから、被相続人のパソコンをチェックし、必要部分をプリントアウトすること等も必要になることがあります。

預貯金の調査

相続財産を確定することだけに限れば、預貯金については、被相続人の死亡時の残高証明書を取れればいいことになります。

しかし、遺産分割の話し合いで、よく、被相続人の死亡前あるいは、死亡後に一部の相続人が引き出した等が争いになることがありますが、このような場合は、取引履歴を取得する必要があります。

共同相続人のうちの1人は、他の相続人の同意がなくても、預金口座の取引履歴を取得することができます(最高裁平成21年1月22日判決 民集63巻1号228頁 判例時報2034号29頁等)。

ただし、被相続人の死亡前に解約され、死亡時には口座がない場合には、預金契約解約後の相続人に対しては、銀行は取引経過開示義務を負わないとされています(東京高裁平成23年8月3日判決 金融法務事情1935号118頁)。

口座の通帳が見当たらず、預金の種類、口座番号がわからない場合でも、金融機関名と支店がわかっていれば、その支店に、残高証明書及び取引履歴の開示を求めることができます。

金融機関や支店も分からない場合は、被相続人のクレジットカードや通信販売などの利用明細などを見て、引き落とし口座の手がかりとなる情報が記載されていないかを確認することになります。

なお、ゆうちょ銀行については、必要書類(戸籍謄本・除籍謄本等)を持参し、窓口で手続をすれば、時間がかかりますが、被相続人の口座を教えてくれます。

不動産の調査

不動産については、地番を調べて、その地番で、土地・建物の全部事項証明書(登記簿謄本)を法務局等で取得し確定することになります。

なお、法務局については、オンライン化されていますので不動産所在地を管轄する法務局まで行く必要はなく、ご自身の最寄りの法務局で取得することが可能です。

地番とは、登記簿上、一筆の土地ごとにつけられる番号で、住所とは異なるものです。

その不動産の権利書又は、市区町村から毎年6月ごろに送付される固定資産税の納付書があれば、それを見れば記載されています。住所がわかっていても、地番が分からない場合は、管轄の法務局のHPをみて、地番の照会の係へ電話して、住所を言って、聞けば教えてくれます。

全部事項証明書を取得する際には、共同担保目録付きのものを取って下さい。料金は増えません。取得用紙の共同担保目録付きのところにチェックを入れればいいだけです。共同担保目録というのは、取得した全部事項証明書の不動産と共同に担保(抵当権等)を設定されている不動産の目録です。

銀行等の金融機関は、融資の担保設定の際には、私道にも住宅部分と共同して担保を設定しますので、非課税の私道(非課税の場合は、固定資産税の納付書ではわかりません)についても、共同担保目録により、分かることがありますし、場合によっては、別のところに不動産を持っていることがわかることがあります。

私道は、法務局で公図を取得し、被相続人の所有不動産の近くの私道の全部事項証明書を取ることにより、相続財産であることがわかることもあります。

また、名寄帳も取得できればした方がよいでしょう

名寄帳とは、当該地方自治体の範囲内にある不動産についての所有者ごとの一覧表であり、未登録建物であっても固定資産税の評価を受けているものは、記載されていますし、非課税の土地も記載されています。

特に、一緒に住んでいない相続人等の場合で不動産がどこにあるかわからない時などは、不動産がありそうな市区町村の資産税課(東京の場合には都税事務所)に申請して不動産の名寄せ帳を取り寄せることになります。

その他の財産の調査方法

生命保険

生命保険については、被相続人の保存する保険証書等で確認することになります。

生命保険は、遺産ではありませんが、税務上のみなし相続財産ということで、課税対象になりますので、相続税の申告を行う場合には記載しなければならず、把握することが必要です。

通常は、保険料の支払いが引き落としで行われることから、通帳等の口座の履歴をチェックすることによっても見つけられるでしょう。

退職金

会社等に勤務されていた方の場合は、明らかに退職金等がないという場合は別として、勤務先に確認することになるでしょう。

退職してしばらく時間が経過している場合でも、共済等から給付金が出る場合もありますので、書類の確認、職歴から必要だと判断したら問い合わせをすることも考えられます。

株式・投資信託・社債

株式・投資信託・社債などの有価証券については、金融機関や証券会社からの郵便による通知、通帳への配当の振込等を参考に特定することになります。

特定された場合は、それらを扱っている金融機関や証券会社などに「評価証明書」等の発行を依頼することになります。

未上場株式については、従前から存在が知れているか、確定申告書に記載がない場合は、確認することが困難でしょうが、職歴等から、考えられるものがあれば、当該会社等に問い合わせることになるでしょう。

自動車、家具等

自動車、家具等の動産については、多くの場合は、さほどの価値にならないと思いますが、それ自体が高価な自動車、家具、宝石、絵画がある場合は、特定し、記録・管理しておくことが必要でしょう。

以上が相続財産(遺産)の調査方法となります。

調査した結果を財産目録として整理しておくとよいでしょう。