相続法の改正-配偶者居住権の創設(配偶者短期居住権及び配偶者居住権)

改正の目的・部分

本年(平成30年)7月6日、参議院本会議で相続法の改正案(正式には、「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案」)が、可決が可決され、相続法の改正が成立し、同月13日、公布されました。

今回の改正は、配偶者の死亡により残された他方配偶者の生活への配慮等の観点及び要介護高齢者や高齢者の再婚が増加するなど、相続を取り巻く社会情勢にも変化がみられることからこれに対応することを目的として、①配偶者居住権の創設、②遺産分割の効力等に関する改正、③遺言制度に関する改正、④遺留分制度に関する改正、⑤相続の効力に関する改正、⑥相続人以外の者の貢献を考慮する制度の創設等を内容としています。

ここでは、まず、今回創設された①配偶者居住権について説明します。

※なお、以下の記載で、被相続人とは、「遺産相続を行う際に相続財産を遺して亡くなった方」のことです。

配偶者居住権の創設(配偶者短期居住権及び配偶者居住権)

(1)創設理由・経緯
今回の改正の発端の一つといえるものに、民法900条4号の内、非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の1/2とする部分が意見とされた最大決平成25年9月4日(民集67巻6号1320頁)及び、本最大決を受けて、上記民法900条4号の違憲部分は削除されました。

しかし、この法改正が及ぼす社会的影響に対する懸念や、配偶者保護の観点から相続法制の見直しの検討が始まりました。

検討の中では、配偶者が相続人となる場合において、その婚姻成立の日から20年が経過した画に、その夫婦が協議により配偶者の法的相続分を引き上げることを法定の方式により届け出たときは、配偶者の相続分を2/3にする案などもありましたが、婚姻制度や夫婦財産制度を見直さず、相続制度のみを見直すことは相当でない等の理由により、結局、この配偶者居住権の創設にいたりました。

改正前の法律には、相続開始後の配偶者の居住の権利を保証する規定はなく、高齢になった配偶者が、居住建物の所有者である他方配偶者の死亡により居住場所をなくすおそれがありました。

また、金融資産が少ない場合、配偶者が自宅不動産の所有権を遺産分割で取得すると、それ以外に他の資産(金融資産等)をもらえなくなることがあるが、それでは、老後の生活が心細いことがあるとして、創設された制度です。

今度、創設された配偶者居住権には、①配偶者短期居住権と②配偶者居住権の二つがあります。

配偶者短期居住権(民法1037~1041条)は、従前の判例(最判平成8年12月17日 民集50巻10号2778頁)やフランスの制度を参考に明文化されたもので

配偶者が、相続開始時に、被相続人の財産に属した建物に無償で居住していた場合に、遺産の分割により、居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から6ヶ月を経過する日のいずれか遅い日までの間、配偶者が相続により当該建物を取得した者に対して、当該建物を無償で使用できる権利ですが、いままでも、ほとんどのケースで、この期間は居住できていたことから、実務に与える影響は小さいと思います。

配偶者居住権(民法1028~1036条)は、判例等に基づかない新設の制度です。
内容としては、以下のような権利です。

【配偶者居住権が求められるための条件はなんでしょうか。】    
ア 相続財産に含まれる建物(以下「居住建物」という。)に、被相続人が死亡した時に居住していた配偶者であること(民法1028条)

イ 相続人間の遺産分割の合意により当該建物の居住権を取得した者、配偶者居住権を遺贈により取得した者、又は、家庭裁判所の審判等により取得した者であること(民法1028条、1029条)。

ウ 被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合には、配偶者居住権が発生しません(民法1028条1項但書)。
    
【配偶者居住権により、どのような効果が認められるのでしょうか。】  
・ 当該配偶者は、居住していた建物の全部について無償で使用就役することができる(民法1028条1項)
・ 配偶者が遺贈により配偶者居住権を取得した場合、持ち戻し免除の意思表示の推定規定が、遺贈について適用され、遺産分割において特別受益とされなくなる(民法1028条3項)。
・ 配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終審の間である。ただし、遺産分割の協議もしくは遺言に別段の定めがあるとき、又は家庭裁判所が別段の定めをしたときは、その定めによることになる(民法1030条)。
・ 配偶者居住権は登記をすることができ(居住建物の所有者は登記の義務があります。)、登記をしたときは、居住建物について、物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる(民法1031条2項、605条)。
     
【配偶者の義務・制約はどのようなものがあるか。】
・ 配偶者居住権は、譲渡することはできない(民法1032条2項)。
・ 居住建物の所有者の承諾をえなければ、改築若しくは増築をし、又は第三者に居住建物の使用若しくは収益をさせることはできない(民法1032条3項)。
・ 配偶者がこれらに違反した場合、居住建物の所有者が相当の期間を定めてその是正の勧告をし、その期間内に是正がされないときは、居住建物の所有者は、配偶者居住権を消滅させることができる(民法1032条4項)。
・ 配偶者は、居住建物の通常の必要費を負担する(民法1034条1項)。

いつから改正の効果が生じるか

配偶者短期居住権及び配偶者居住権に関する民法の規定は、公布(平成30年7月13日)の日から起算して2年を越えない範囲内において制令で定める日から、効力を生じる(法律的には、「施行(セコウ)される」と言います。)ことになっていますので(付則1条但書4号)、平成32年7月12日までの期間で効力を生じることになっています(具体的な日は、現時点(平成30年7月25日)では、決まっていません)。

そして、遺産分割の合意を取得原因とする配偶者短期居住権及び配偶者居住権は、上記の施行日以後に開始された相続から適用されることになります(附則10条1項)。また、遺言書による遺贈を取得原因とする配偶者居住権は、施行日以後に作成された遺言から適用されることになります(附則10条2項)。

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