相続放棄の手続(申述)

相続放棄とは、相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない、つまり相続をしないことです。

相続放棄を行うためには、家庭裁判所で手続をしなくてはなりません

この手続を申述といいます。

相続放棄の申述は、家庭裁判所の受理手続によってその効力を生じます(民法938条、家事手続201条1、5,7,8項、別表195項)。

この手続は、前記のとおり、相続人が自分のために、相続の開始があったことを知った時から原則として3ヶ月(熟慮期間:じゅくりょきかん)以内にしなければなりません(民法915条1項)。

しかし、例外として、最高裁は、「熟慮期間は、原則として、相続人が前記の各事実(相続開始原因たる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実)を知った時から起算すべきものであるが、相続人が、右各事実を知った場合であっても、右各事実を知ったときから3ヶ月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて、当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人において右のように信ずるについて相当な理由があると認められるときには、相続人が前記の各事実を知った時から熟慮期間を起算すべきであるとすることは相当でないものというべきであり、熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算すべきものと解するのが相当である。」(最判昭和59年4月27日民集38巻6号698頁)との判決を出しています。

この判決は「相続財産が全く存在しないと信じたため」としており、積極財産(預貯金等のプラスの財産)と消極財産(借金等のマイナスの財産)の双方が全く存在しないと信じることを熟慮期間の起算点をずらす要件としています。

そのため、保守的な観点からすれば、預金や不動産等のプラス財産が存在することを知っている時(又は、知りうべき時)は、マイナスの財産の存在は知らなくても、その時点が起算点となり、それから3ヶ月以内が熟慮期間と考えて対応すべきことになります。

相続放棄の申述書が家庭裁判所に提出されると、裁判所書記官により書類不備がないか確認され、その後、裁判所より、相続放棄を申し立てた相続人等に対し、書面による照会等の形式で、

① 被相続人の死亡をいつ知りましたか
② 相続放棄申述受理の申立は、あなた自身でしたものですか。それとも、誰かに手続を依頼したものですか。
③相続放棄の申述は、あなたの意思によるものですか。
④あなたが相続放棄をする理由を具体的に記入して下さい。
⑤あなたは、遺産の全部又は一部について、これまでに、処分、隠匿又は消費したこと(例えば、遺産の土地を売却したり、預金をおろして使ったりしたこと)がありますか。

などのの質問により、放棄が申述を申し立てた相続人の真意に基づくものなのか、また、法定当然承認がないか等の確認が行われます。

さらに、前記の最高裁の判例と関連して、被相続人の死亡後3ヶ月を過ぎた申述については、場合によっては裁判官による審問が行われることもあります。

相続放棄の申述が受理されますと、家庭裁判所より、「相続放棄申述受理通知書」が送付されてきます。

この通知書は再発行されませんので、大切に保管して下さい。これ以外にも申請手続をすれば、受理証明書を取得することもできますが、基本的に必要な手続は、「相続放棄申述受理通知書」で、可能です。

相続放棄の効果

相続放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。

その結果、放棄した者を除く他の共同相続人が相続することになりますし、他に同順位相続人が存在しなければ、次順位の相続人が相続人となります。

例えば、設例(1)の例で述べると、被相続人Bが死亡すると、子であるACが相続人となりますが、Aが相続を放棄すると、CがAの分も含め相続することになります。しかし、この場合、Bの財産は、8000万円のマイナスですので、通常、Cも相続放棄をします。

すると、(Ⅰ)次順位の相続人(民法889条1項1号)であるBの父と母が相続人となりますが、通常はもう亡くなられていることが多いでしょう(ご存命の場合は、ACと同じように相続放棄をすることになるでしょう)。

その場合、さらに(Ⅱ)次順位の相続人であるBの兄弟姉妹(民法889条1項2号)、及び兄弟姉妹の内、亡くなられている方については、その子供に代襲相続されることになります(民法889条2項)。

したがって、最終的に決着をつけるとすると、ご存命の前記(Ⅰ)(Ⅱ)の方すべてに相続放棄をしていただくことになります。そうでないと、法律的には、次順位以降の相続人の内、相続放棄されない方が、債務(資産もですが)を相続されることになります。

この場合、次順位以降の相続人の方々の熟慮期間の起算点は、被相続人の死亡と共に、前の順位の相続人が相続放棄をしたことを知った時からになります。

できれば、相続放棄の前あるいは後に、次順位以降の相続人の方にも、声をかけていたなどした(これも前記の熟慮期間との関係から注意が必要ですが)方がよいのですが、なかなか難しいケースも多いようです。
結局、直接の相続人だけが放棄し、後は、伝えないというケースもあるようです。

そこで、被相続人が債務超過のケースで、財産自体が預貯金等しかない場合は、後記する限定承認の方法が使われる場合があります。

相続放棄だと、上記のように、次順位以降の相続人も相続放棄をしなければなりませんが、限定承認の場合であれば、ACが行えば、完了します。

また、限定承認の手続は、後記のとおり、相続放棄と比べれば、かなり面倒な手続ですが、もっとも、面倒なのは、不動産等金銭以外の財産の換価処分等に係わる手続ですので、このような財産がない場合であれば、その分、簡単にできます。

むろん、限定承認を行おうとすれば、弁護士に頼むしかないですが、ただ、費用、時間がその分、小さくてすむことから、このような場合にも使われることがあります。

相続放棄の申述の手続だけでしたら、通常の場合であれば、素人であるご本人でも可能かとおもいますが、相続放棄であっても、単純にその方だけが放棄すればいいというものではないことは、上記のとおりですし、特に相続から3ヶ月以上経過した事案の場合は、家庭裁判所へ提出する申述書の記載にも慎重な対応が必要です。

相続放棄は、手続等でミスをすると、大変なデメリットが生じます。法律の専門家である弁護士に、ご相談することをお勧めします。

相続問題の初回相談は無料です

相続問題の初回相談は無料です。お気軽にお電話ください。

相続お問い合わせボタン

このページの先頭へ