共有物分割訴訟の流れ

この記事は、不動産について共有物分割を考えられている方、特に共有物分割訴訟を検討されている方に向けて書いています。

共有物分割訴訟

共有者間で、協議がまとまるようであれば、訴訟を提起する必要がありませんので、共有物分割訴訟を提起するのは、協議がまとまらなかった場合になります。

共有物分割訴訟の判決で決められる分割方法は以下のとおりです。

①代償分割(価格賠償による分割)
共有不動産を共有者1名が取得し、その取得した者が他の共有者に代償金(価格賠償)として、金員を支払う方法。

②現物分割
共有不動産を現物で分ける方法。分割は、共有持分の経済的割合で公平に分割することとなるが、具体的な分割は、裁判所の自由裁量に任されている。

③換価分割-形式的競売
共有不動産を競売し、売却代金を持分割合に応じて共有者で分ける方法。

なお、和解により、①②が行われることもありますし、③の代わりに相続人が第三者に共有不動産を売却し、持分割合等に応じて、売却代金をわかることもあります。

裁判所による共有物分割方法の選択

(1) 法律の規定
法律は、共有物を分割する場合に裁判所がどのように判断するかについて、「共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。」(民法258条2項)としか、定めていません。

この規定だけを見ると、裁判所としては、現物分割か換価分割かだけを判断するかのようにも思えますが、裁判所が命じる分割方法に関する優先順位としては、判例実務上、以下のように整理されています。

(2) 分割方法の選択順序
共有物の現物を分割することができない場合とは、物理的に不可能な場合のみではなく、社会通念上適正な現物分割が著しく困難な場合も含まれるとされています(最高裁昭和46年6月18日判決民集25巻4号550頁判時637号38頁)。

しかし、東京、特に23区内の場合、共有不動産の現物分割を行うことは、もともと、土地の面積が狭く、分割のための上下水道、ガス管、電線の再配置が難しく、また、条例の規制も守らなければならないことから、ほとんどの場合できません。

また、現物分割であっても、例えば、隔地間の複数の共有物件を現物分割する場合には交換と認定され、固定資産の交換の特例が受けられないと譲渡所得課税の対象になることもあります。

さらに、法律上は、現物出資が原則的分割方法とされてはいますが、判例(最高裁平成8年10月31日判決 民集50巻9号2563頁外)は、現物分割が可能であっても、後記の全面的価格賠償の要件を満たせば、価格賠償も可能としています。

このため、裁判所の審理は、理論的には、①代償分割(価格賠償)、②現物分割、③換価分割の順で、分割方法が検討されることになります(実際の審理では、当事者双方の主張の順番等により、必ずしもこの順番で検討されるわけではありません)。

代償分割(価格賠償)は認められるか

代償分割、特に、共有不動産を特定の相続人の所有として、当該相続人が他の相続人に代償金(価格賠償)を行う方法(全面的価格賠償)が判決により認められる要件について、判例(最高裁平成8年10月31日判決民集50巻9号2563頁外)は、
「当該共有物の性質及び形状、共有関係の発生原因、共有者の数及び持分の割合、共有物の利用状況及び分割された場合の経済的価値、分割方法についての共有者の希望及びその合理性の有無等の事情を総合的に考慮し、当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められ、かつ、その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が存するときは、」

全面的価格賠償が認められるとしています。

整理すると、全面的価格賠償が認められるためには、特段の事情があること、つまり、ア 相当性及びイ 実質的公平性があることが必要で、

ア 相当性とは、
①当該共有物の性質及び形状
②共有関係の発生原因
③共有者の数及び持分の割合
④共有物の利用状況及び分割された場合の経済的価値
⑤分割方法についての共有者の希望及びその合理性の有無等
を総合的に考慮し、当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められること。

イ 実質的公平性とは、
①価格が適正に評価されていること
②当該共有物を取得する者に支払能力があること
から、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても、共有者間の実質的公平性を害しないと認められること
をそれぞれ、満たさなければならないことになります。

①代償分割、特に全面的価格賠償に関しては、このような条件(要件)を満たさなければならないため、前提となる当該不動産に関する評価額の点で当事者間の争いが生じることが多々あり、また、代償金(価格賠償)を準備するために、金融機関等からの融資の問題が生じることも多く、審理が長期化しがちです。

①代償分割が認められない場合は、②現物分割は、現実的には、困難なことが多いことから、結局、③換価分割になることになります。そして、任意売却の和解が成立しなければ、
「別紙物件目録1記載の土地及び同目録2記載の建物について競売を命じ、その売得金から競売手続費用を控除した金額を、このうち同目録1記載の土地については、原告及び被告に各●分の1の割合で、同目録2記載の建物については、原告に●分の●、被告に●分の●の割合で分割する。」
等の競売を命じる判決を取得し、判決確定後、後記のとおり競売の手続を行うことになります。

競売は、従前、通常の売買の8掛けでなければ落札されないとされてきましたが、競売手続の改正により、東京であれば、かなりの高額で、落札される例もあり、私の事務所で扱った案件でも、競売前の不動産業者の価格の2倍近くで、落札された例もあります。ただし、一発勝負で、どのような結果となるかわからないリスクは依然としてあります。

また、競売を命じる判決は確定しなければ、効力がなく、これに反対する相手方は、控訴、上告が可能であり、最長、最高裁の判決がでるまで、引き延ばされる可能性はあります。

さらに、後述するように判決後に競売手続を申し立てた時、一連の手続が終わって配当として代金を受け取ることができるまで最短でも競売申立て時から1年弱はかかることが一般的であることなどの時間的問題もあります。

これらの点から、換価分割を望む場合もできれば、任意売却等で、和解を求めることも、合理性がある場合は、多いと思います。ただし、換価分割を望む側としては、任意売却をして売買代金を持分割合で分ける内容で、和解をした場合、任意売却期限を決め、任意売却期間が経過したときには、単独で競売申立ができる条項を設ける必要があります。

形式的競売の申立て

競売を命じる判決が確定した場合、次は競売手続について別途申立てが必要になります(同判決の確定によって自動的に競売手続が開始されるわけではありません。)。

民事執行法は、強制執行・担保権の実行としての競売のほか、「民法、商法その他の法律の規定による換価のための競売」を民事執行として定めており(民事執行法1条)、共有物分割のための競売(民法258条2項)は、この「民法、商法その他の法律の規定による換価のための競売」に含まれ、いわゆる形式的競売(債権の満足を目的とするものではなく換価そのものを目的としてなされる競売)と呼ばれています。

形式的競売の手続について

大まかに、以下のような流れで手続が進んでいきます。

(1) 競売手続申立て

ア 必要書類等
必要な部数や郵券額等は、所轄の裁判所に確認してください。
(ア) 形式的競売申立書(申立書、物件目録、当事者目録)
(イ)共有物分割請求訴訟の判決謄本
(ウ) 発行後1か月以内の不動産登記事項証明書(全部事項証明書又は現在事項証明書)
(エ) 公課証明書(最新の公課及び評価額が記載されているもの)及び不動産評価証明書
(オ) 商業登記事項証明書(当事者の中に,法人がある場合には,1か月以内に発行されたものを提出。ただし,申立債権者については,代表者事項証明書でも可)
(カ) 住民票(債務者又は所有者が個人の場合には,1か月以内に発行されたものを提出。なお,その者が住民登録された外国人である場合も同じ)
(キ) 特別売却に関する意見書(申立書に意見を記載する場合は不要)
(ク) その他現況調査等に必要な書類
(ケ) 建物図面(法務局の登記官による認証のあるもので,1か月以内に発行されたもの)及び物件案内図(住宅地図等で、物件に目印をしたもの)

イ 申立費用
(ア) 申立手数料 1件につき4000円
(イ) 予納郵券 
(ウ) 予納金
※ 形式的競売の場合、担保不動産競売や強制競売事件と異なり訴求債権が存在しないので、競売対象不動産の固定資産税の評価額を基準として算出されます。
※申立て後に、裁判所から予納金の金額を算定の上申立人に対して金額が通知され、その後に予納する流れになります。

評価額が2000万円未満…………………………60万円
評価額が2000万円以上5000万円未満………100万円
評価額が5000万円以上1億円未満……………150万円
評価額が1億円以上………………………………200万円

※競売についての差押え登記との関係で必要となる登録免許税
下記の(3)の競売についての差押えの登記との関係で、同登記に必要となる登録免許税も支払う必要があります。金額は、当該不動産の固定資産評価証明書の1000分の4とされています。

※申立て後に、裁判所から予納金の金額を算定の上申立人に対して金額が通知され、その後に予納する流れになります。

(2) 競売手続開始決定

前記予納金等の納付が完了すると、裁判所から競売手続開始決定が出されます。

(3) 競売についての差押えの登記

 
裁判所書記官は、前記競売手続開始決定後直ちに管轄登記所に対し、競売対象不動産について競売の差押え登記手続の嘱託を行います。

(4) 物件についての執行官による現況調査報告書の作成、評価人による評価書の作成

開始決定と同時に、執行裁判所は、執行官に当該不動産の形状、占有状態等の現況を調査するよう命ずる現況調査命令を発令し、前記差押の登記が完了すると、執行官の調査が本格化します。

執行官は、登記や図面を確認の上、現地に赴き、当該不動産の形状や建物の配置、間取り等を確認します。実際には、執行官からの所有者・占有者に連絡が来て、面談という形で様々な関連情報について情報収集が行われることが一般的です。

このような執行官の現況調査について、執行官は現況調査報告書を作成し、執行裁判所に提出します。

また、同じく開始決定と同時に、執行裁判所は、売却基準価額を定める資料とするために、評価人(不動産鑑定士)に対象不動産について、評価をさせるため、評価命令を発令します。

評価人も、執行官と同様に対象不動産に立ち入り、所有者・占有者に対して質問等をします。

評価人は、評価の結果を評価書に記載し、執行裁判所に提出します。

(5) 物件明細書の作成及び売却基準価格の決定

執行官による現況調査報告書及び評価人による評価書が執行裁判所に提出されると、裁判所書記官は、物件明細書を作成し、執行裁判所は対象不動産の売却基準額を決定します。

物件明細書とは、裁判所書記官が作成する書面で、①物件の表示②売却により効力を失わない権利・仮処分③売却により設定されたものとみなされる法定地上権の概要が記載されます。

また、執行裁判所は、評価人による評価書に基づき、対象不動産の売却基準価額を決定する必要があります。この売却基準価額について、当初、執行裁判所が定めた売却基準価額で売却ができなかった場合には、事後的に売却基準価額が変更されることもあります。

なお、売却基準価額が定められると、この価格で手続費用や優先債権者がいる場合に同債権者に対する弁済ができるかどうかを判断した上で、剰余がない場合には、手続は取り消されることにもなります(このように、一般的に形式的競売においても剰余主義の適用があると解されています。)。

(6) 売却スケジュールの決定

現況調査報告書、評価書及び物件明細書(これらについて、実務上、いわゆる「3点セット」と呼ばれています。)が完成し、執行裁判所による売却基準価格が定められ、無剰余にもならないということになると、売却手続に移行します。

売却方法としては、期日入札、期間入札、競り売り、特別売却の方法がありますが、以下では一般的に多く行われている期間入札を前提とします。

売却のスケジュールについて、まず売却実施処分の日が定められ、記録閲覧開始日、入札開始日、入札終了日、開札期日、売却決定期日がそれぞれ定められます。

売却実施処分がなされると、買受可能価額(売却基準価額から10分の2に相当する額を控除した価額以上の価額)や売却スケジュール等が裁判所の掲示板等に公告され、当事者等にも通知がなされます。

記録の閲覧に関して、前記「3点セット」(現況調査報告書、評価書及び物件明細書)は、入札者にとって入札を判断する重要な資料となるものであり、その写しが裁判所内の閲覧室に備え置かれるほか、近年ではインターネット上の公開(BITシステムhttp://bit.sikkou.jp/app/top/pt001/h01/)もなされています。

(7) 入札
入札者は、買受申出の保証を提出する必要があり(売却基準価額の2割の金額)、同金額を振込等の方法により支払い、その証明書を入札書と一緒に封筒に入れて入札を行います。

なお、この買受申出の保証について、買受申出人の入札価額が最高価となって後述する売却許可がなされたにもかかわらず、代金納付がなされなかった時は、その保証額の返還はされません。

ただし、買受申出をしたものの、入札額が最高額に満たなかったために落札できなかった場合には、保証額の返還はされます。

(8) 開札

開札期日になると、執行官が入札者の立ち会うことができる売却場で入 札書の入った封筒を開封する方法により開札を行います。

その上で、有効な入札の中から最高価格かつ買受可能価額を超えている金額での買受申出をした入札者について、最高価買受申出人と決定し、2番目に高い価格かつ買受可能価額を超えている金額での買受申出をした入札者について、次順位買受申出人と決定します(実際には、最高価買受申出人が代金納付を済ませることが大半なので、この次順位買受申出人に順番が回ってくることは稀です。)。

開札期日が終了すると、執行官は、期間入札調書を作成し、その物件に対する入札書を調書に添付します。

なお、期間入札を実施したにもかかわらず、誰も入札を行わなかったという場合には、まず特別売却手続(3か月以内の特別売却期間内に買受可能価額での買受申出があれば、先着順で売却されます。)が行われ、それでも入札者がいない場合には売却基準価額の変更がなされる等の措置がとられます。

(9) 最高価格の落札者に対する売却許可決定

前記開札期日にて最高価買受申出人等が決定の後、1週間以内に売却決定期日が開かれ、執行裁判所の裁判官が、売却の許可または不許可を言い渡します。
この機会に、それまでの競売手続全体の適法性が見直され、この売却許可決定で許可決定が下されない限り、最高価買受申出人は代金納付をすることはできません。

(10) 落札者が代金納付

前記売却決定許可決定が確定すると、執行裁判所が買受人に対して代金納付期限を定め、買受人はこの期限までに買受申出の際に提供した保証額を控除した代金残額を執行裁判所に納付しなければなりません。代金納付期限は、売却許可決定確定日から1ヵ月以内の日になります。

買受人が代金を納付すると、その時点で対象不動産の所有権が買受人に移転します。

他方、買受人が代金を納付しなかった場合、売却許可決定は失効し、前述のとおり買受人は提供した保証額の返還請求権を喪失し、次順位買受けの申し出がなされていた場合には、その申出について売却許可・不許可の決定がなされることになります。

(11) 対象不動産の引渡しについて

買受人についての売却許可決定が確定した時点で、買受人から対象不動産の所有者等に対し連絡があり、明渡しに関する調整が開始されることが一般的です。

他方、買受人が落札した対象不動産に、買受人に対抗できない占有者がいて、その占有者が明渡しを拒んでいる場合、買受人保護のための簡易な占有取得手段として引渡命令の手続も用意されています(建物明渡訴訟等の訴訟を経ずにスピーディーに占有者に明渡しを強制することができます。)。

(12) 申立人等に対する配当手続

買受人が代金を納付すると、その日から1ヵ月以内に配当期日が指定され、申立人等に対し、換価についての配当がなされます。

裁判所書記官は、執行に要した費用等を計算した上で配当表を作成し、申立人と相手方に対してそれぞれ配当額について配当を行います(事前に振り込み先口座等を記載した書類を提出し、振込による方法で配当を受けることが一般的です。)。

(13) 終わりに

前記のような流れで形式的競売の手続が行われますが、一連の手続が終わるまで、形式的競売の申立てから配当まで、1年弱程度はかかることが一般的です。

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