被相続人の財産を管理することによって財産の維持形成に寄与した場合、財産管理型の寄与分が認められる場合があります。

被相続人の貸アパートを管理することにより管理費用の支出を免れた場合や、管理のための費用(火災保険、修繕費等)を代わりに出費した場合などです。

認められるための要件は以下のとおりです。

(1) 被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を越える特別な寄与があること

ア 【財産管理の必要性】

被相続人の財産を管理する必要があったことが必要です。被相続人の貸アパートについて管理会社と契約している場合に、定期的に清掃したとしても寄与分は認められません。

イ 【特別の貢献】

行った管理行為の内容が被相続人との身分関係に基づいて通常期待される範囲を超える貢献であることが必要です。

定期的に被相続人の貸アパートの雑草を取りに行った程度では、認められません。

ウ 【無償性】

無報酬又は、これに近い状態でなされていることが必要です。

ただし、報酬を受けていても、行っている管理行為の正規の報酬と比較し、著しく低い場合は、無償性が認められることもあります。

エ 【継続性】

定まった期間はありませんが、数ヶ月では難しいです

(2) 寄与行為の結果として被相続人の財産が具体的に維持又は増加していること

寄与主張者が、管理行為を行ったことにより、被相続人の財産が具体的に維持または増加していることが必要です。

【上記要件の立証】

財産管理の必要性の立証は、貸アパート等の不動産登記簿謄本、写真、賃借人との契約書等の資料で行うことになります。

特別の貢献については、具体的な財産管理行為の内容を立証するために、寄与主張者が財産管理に要した費用を負担したことがわかる資料として、寄与主張者の預貯金通帳、寄与主張者の金銭出納帳、家計簿等で立証することになります。

その他の無償性、継続性も、基本的には、上記の資料等で、立証することになります。

また、後記のように評価のためには、一般的な財産の管理の費用を明らかにすることが必要なため、リフォーム業者の標準工事費用、シルバー人材派遣センターの基本料金、不動産管理会社の請負料等の資料も提出することが必要になります。

上記の資料で不足の部分及び前提を立証するため、寄与主張者等の報告書・陳述書を作成し提出することになります。

【評価方法】

貸アパートの管理のように財産管理行為そのものが寄与行為の場合は、その管理を第三者に委託した際の報酬額を基準額とし、それに裁量割合を乗じて計算するのが通常です。

また、管理のための費用(建物の火災保険・修繕費等)を出資したことが寄与行為の場合は、寄与主張者が現実に負担した額を基準額として、それに裁量割合を乗じるのが一般です。

このように寄与分の主張は難しく、寄与分の主張を行う場合は、弁護士にご相談下さい。