母が亡くなりました。母の相続人は、兄、姉、私です。
母は、遺言書を残していましたが、その内容は、母の遺産の2/3を兄に、1/3を姉に相続させるもので、私の相続分はありませんでした。
聞いたところでは、このような遺言書は、遺留分を侵害しているもので、私は、法定相続分の半分の1/6を兄と姉に請求できるということです。
しかし、そのことを兄と姉に言っても、兄も姉も取り合ってくれません。
このような場合は、どのようにすればよいのでしょうか。
相談者がおっしゃっているように、上記の遺言書は、遺留分を侵害しており、相談者は、兄姉に遺留分侵害額請求権(被相続人である母が亡くなったのが、令和元年(2019年)6月30日以前の場合は、遺留分減殺請求権)を行使することができます。

そして、相手方(この場合は、兄姉)が話し合いに応じない場合、または、話し合ったがまとまらない場合は、遺留分侵害額請求調停(または、前記の期間の前に相続が開始した場合は、遺留分減殺請求調停)を申し立てることになります。
そして、同調停で話がまとまらない場合は、遺留分侵害額請求訴訟を提起することになります。

逆に言えば、調停を行ってからでなければ訴訟を提起することはできません(家事審判法257条1項、244条)。

この遺留分侵害額請求調停は、「一般調停事件」であり、遺産分割調停のような「別表第二事件」の調停ではありません。

遺産分割調停のような「別表第二事件」の場合は、調停が成立しない(不調)場合は、審判手続となり、裁判官が審判で判断を示すことになります。
手続は連続しており、さらに、多くの場合は、同じ裁判官により、判断されます。
これに対し、「一般調停事件」の場合は、不調の場合は、別に訴訟を提起しなくてはなりません。

このことは、調停の進行にも影響します。
遺産分割及び遺留分侵害額請求において、よく争点となるのは、遺産、特に不動産の評価です。
不動産の評価について、調停の申立人と相手方が合意できればよいですが、合意できない場合があります。

合意できない場合、遺産分割調停においては、鑑定人の鑑定を行い、評価を確定し、調停を成立させるか、できない場合は、審判で決着をつけます。

しかし、遺留分侵害額請求調停の場合は、調停内で、鑑定をすることはまずありません。というのは、遺留分侵害額請求調停が不調になった場合は、別の手続である訴訟で争うことになります。

裁判所も家庭裁判所だったのが地方裁判所になります。
初めからやり直すことになるため、仮に調停で鑑定を行っても、訴訟では、それを使えず、結局、訴訟で再度、鑑定を行うことになってしまいます。
そこで、調停では鑑定をしないことになります。
このため、評価の合意ができない場合は、不調になります。

この点を含め、遺留分侵害額請求調停は、遺産分割調停に比べても、調停が成立しづらい調停です

なお、遺留分侵害額の請求は、相手方に対する請求の意思表示によって行使されますが、調停を申し立てただけでは、行使したことにはなりませんので、時効の関係では注意が必要ですので、これについては、また、記事を書きます。