判例紹介

遺産共有と他の共有が併存する場合の共有物分割の方法(最高裁平成25年11月29日判決 民集67巻8号1736頁)

内容

本判例は、不動産の共有者の一人が亡くなり、相続による共有(遺産共有)が生じた場合の共有物分割についての重要判例です
本件判例の事案を説明すると、以下のようになります。

本件土地は、夫(X1)、夫が代表の会社(X2)、X1の妻(A)が、それぞれ72分の39、72分の30、72分の3の割合で、共有していました

Aが亡くなり、その相続人はX1、並びにAとX1の子であるX3とY1及びY2でした。

原告(X1~3)は、被告(Y1・Y2)に対し,共有物分割訴訟を提起し、Aの持分が72分の3にすぎないことからAの持分を原告会社(X2)に取得させ、当該持分の価格をX1、X3、Y1及びY2に対して賠償させる方法(全面的価格賠償)による分割を主張しました。

地裁判決は、本件土地は、現物分割が不可能であるとして、競売分割を命じました。

原審高裁判決は、本件土地をX1の持分72分の39、原告会社(X2)の持分72分の33の割合による共有として、原告会社(X2)に、X1、X3、Y1、Y2に対し、価格賠償金として合計466万4660円(全面的価格賠償)を支払うよう命じました

これに対し、Y1及びY2は上告受理申立を行いました。

説明

前記の原審の判断に対し、最高裁は、
① 共有不動産の所有者の1人が死亡し、相続による遺産共有持分が従来の共有関係の内部に生じた場合に行われる分割手続は、まずは、共有物分割訴訟(民法258条)であり、その結果、遺産共有の持分権者(相続人)に価格賠償として支払われた財産については、遺産分割手続(民法907条)により分割されるとしました。

そして、
② 遺産共有持分権者に支払われる賠償金は,遺産分割によりその帰属が確定されるべきものであるから,賠償金の支払を受けた遺産共有持分権者は,これをその時点で確定的に取得するものではなく,遺産分割がされるまでの間これを保管する義務を負うというべきであるとしました。

さらに、
③ 裁判所は,このような判決をする場合には,その判決において,各遺産共有持分権者において遺産分割がされるまで保管すべき賠償金の範囲を定めた上で,遺産共有持分を取得する者に対し,各遺産共有持分権者にその保管すべき範囲に応じた額の賠償金を支払うことを命ずることができるという判決を行いました。

本判例は、共有不動産の所有者の1人が死亡し、その相続人と第三者(原告会社X2)が共有者となった事案です。
このような共有物の分割と遺産分割が併存する場合は、第1段階としては共有物分割第2段階としては遺産分割で行うという道筋を示した意味で重要です。