私と友人A,Bは、30年前に、東京23区内の店舗の土地・建物を共同購入し、小売店を開業しました。
幸い店は繁盛し、営業を続けていました。
ところが、最近、A,Bが相次いで亡くなり、その相続人が、共有不動産である店舗の土地・建物(以下「本件共有地」といいます。)の分割を求めてきました
私としては、店を続けたいことから、本件共有地の共有持分を買い取りたいと思い、AとBの相続人に対し、固定資産税の評価額をもとに、提案しましたが拒否され、Aの相続人からは売却し代金を持分に応じて支払うことを、Bの相続人からは現物分割を求められ、結局、話し合いでは分割方法がきまりませんでした。
Bの相続人が共有物分割訴訟を提起するようですが、共有物分割訴訟においては、現物分割が優先すると聞いたのですが、本当でしょうか
共有物分割訴訟を定めた民法258条2項は、現物分割を原則とし、例外的に共有物の分割が不可能であるとき現物分割によりその価格を著しく減少させるおそれがある場合にのみ換価分割つまり、競売が認められるとしています。

そこで、共有物の持分の買い取り(全面的価格賠償)についても、現物分割が不可能等であることを求められるとすると、現物分割が全面的価格賠償に優先することになります。このことから、設問のような疑問がでたものと考えられます。

しかし、結論としては、この二つの方法には優劣はなく、全面的価格賠償の要件が満たされれば、相談者の希望のとおり、A、Bの相続人から、それぞれの共有物の買い取りを認める判決が出されることになります。

全面的価格賠償については、本HPの「共有物分割訴訟で、他の共有者の持分を全部買い取る判決は取得することは可能なのか」で、記載しましたので、興味がある方は、読んで頂ければと思います。

特段の事情、すなわち、①共有物を共有者のうちの特定の者(この場合であれば相談者)に取得させるのが相当であり、かつ、②共有者間の実質的公平性を害さない場合に、全面的価格賠償の判決を出すことがでるとの最高裁の判決(最高裁平成8年10月31日判決 民集50巻9号2563号)が出されています。

ただし、ここでいう②共有者間の実質的公平性を害さない場合とは、ア共有物の価格が適正に評価されていること、及び、イ 共有物を取得する者にアから算定される賠償金の支払い能力があることが必要です。
このうち共有物の価格については、裁判でも、当事者の一致ができない限り、鑑定で決められることになります。

設問では、協議の段階で、相談者は固定資産税をもとに買取価格を提示していますが、固定資産税は時価の70%を目安に定められていますので、適正価格よりは安い可能性が大きいです。

とはいえ、交渉当初で、どのような金額を提示するかは難しい判断です。

最終金額は、当初提示額より、大きくなると考えられますし安すぎれば、相手方の感情を害することも考えられます。

交渉の段階でも、弁護士に相談することをお勧めします。