母親が亡くなり、兄弟姉妹がその遺産をどう分けるか話し合っても互いに感情的になり、合意できません。そこで、遺産分割調停を家庭裁判所に申立てようと思います。
ただ、調停がうまく成立すればよいですが、成立しない場合、調停はどのようになるのでしょうか。
調停手続の終わり方としては、①調停の成立、②審判手続への移行、③調停に代わる審判、④取下げ、⑤調停をしない措置(なさず、家事審判手続法271条、家事審判規則132条1項)があります。①②については、「遺産分割調停手続の終わり方1(①調停の成立、②審判手続への移行)」で、③については、「遺産分割調停手続の終わり方2(③調停に代わる審判)」で、説明しましたので、ここでは、④取下げ及び⑤調停をしない措置について、説明します

④の取下げは、申立人が遺産分割調停を取下げることです。
申立人は、遺産分割調停事件が終了するまでの間であればいつでも取下げることができ、相手方の同意も不要です。

申立人が取下げる場合としては、まず、遺産分割の前提問題である相続人の範囲、遺言書の効力又は解釈についての争い、遺産分割協議書の効力についての争い、または、遺産の帰属に就いての争いがあり、話し合いである調停で決着しない場合があります。

このような場合は、審判では決着がつけられないため、訴訟で決着しなければなりません。これらは、個人の権利の存否等の問題であるため、憲法上、審判では最終判断ができないためです

そこで、このような場合は、裁判所・調停委員は、申立人に対し、取下げを勧め、多くの場合、申立人は調停を取下げることになります。また、既に、調停以外に、このような訴訟が提起されている場合も同様、取下げを勧められます。

さらに、調停では決着がつかないが、申立人がこれ以上の争いを望まなかったり、審判でよい結果がでないと見込まれる場合も、取下げが行われます

⑤の調停をしない措置(なさず)は、ア 事件が性質上調停を行うのに適当でないと認めるとき、または、イ 当事者が不当な目的でみだりに調停の申立をしたと認めるとき、裁判所が調停手続を終了する制度です。

この制度ができる前には、前記のように、相続財産の範囲等の前提問題で争いがあり調停が成立しない場合も、申立人が取下げを行うまでは、調停手続を続行しなければなりませんでした。この制度ができたことから、裁判所が申立人に取下げを勧告してもかたくなにこれを拒む場合、裁判所は、このなさずにより、調停手続を終了させることができるようになりました。

他方、この制度により、前提問題を争う訴訟と平行して調停を進め迅速な解決を目指すことはできなくなったことから、当事者として、迅速な解決のため、訴訟と調停をどのように選択し進めていくかを、より考え、対応しなくてはならなくなりました。