母親が亡くなり、兄弟姉妹がその遺産をどう分けるか話し合っても互いに感情的になり、合意できないことから、家庭裁判所に遺産分割調停を申立てました。
ようやく、調停が成立しそうですが、調停の成立とは具体的には、どのようなことを行うのでしょうか。
また、その場合、どのような点を注意しなくてはいけないでしょうか。
調停の成立は、裁判官が調停条項を読み上げる等して、当事者・代理人がそれを確認することにより行われます。
普通の契約との一番の違いは、当事者等が書面に署名・捺印を行わない点です。

また、まだ、調停は成立しないだろうと思っていたら、いきなりまとまり、同一期日で調停を成立させることもよくあります。
このような場合、裁判所としては、次回の期日で調停を成立させようとすると、当事者の気持ちが変更することが考えられるため、まとまりそうであれば、即刻、調停を成立させます。

そこで、調停がまとまりそうになってから準備しようとのんびりしていると、間に合わず、準備不十分の状態で調停が成立してしまうことになりかねません。
成立した調停は、判決と同様の強力な効力を持っています
しかし、調停に記載された条項が不完全だと、相手方が進んで条項を履行しない場合、調停調書で履行を強制するために余計な手間がかかったり、強制することができなくなったりすることもあります

たとえば、土地・建物等の不動産の相続の移転登記を当方が受ける場合は、当然、その土地・建物の目録を正確に作成するとともに、当方及び相手方の現在の住所及び登記簿上の住所を確認し、正確に記載することが必要です。
さらに、難しい登記の場合は、あらかじめ、司法書士にその条項で登記できるかどうかを確認することが望ましいです。

お金の支払いを受ける場合も同様で、支払いの条件、金額等を正確に記載することが必要です
お金を振り込んでもらう口座について、調停成立後、書記官にFAX、郵送等で連絡することも認められますが、口座がわからない限り、調停調書が作成されませんので、あらかじめ、通帳のコピー等を持参した方がよいでしょう。

調停条項の記載の仕方により、強制執行できたり、できなかったりするわけですが、強制執行できるようにすることと利便性とを比較して、どちらかを選択しなければならない場合などもあります

例えば、遺産に預金、投資信託等があり、相手方が解約し、相続分で分けて、当方に送金するという場合、相手方が履行しない場合に、この条項に執行力を持たせようとすると金額を確定して記載しなくてはなりません。
相続分の割合で記載しても、金額が分からないため、強制執行することができません。
強制執行できるようにするためには、解約日を想定し、それまでの利息等を金融機関に聞き、金額を確定し、調書に記載することが必要です。

上記のような場合は、相手方への信頼度、代理人として弁護士が委任されているか等で、金額を確定し、強制執行ができるようにするかどうかを決めることになるでしょう。

また、法律的に拘束力を持たせることができない事柄など(例えば相続債務については、債権者(金融機関等)が承諾しなければ、特定の相続人のみを債務者とすることができませんが、諸般の都合により、債務者を特定の相続人にできない場合、支払いの責任は一次的に(会社を相続する)特定の相続人にする等定めることなど)についても、紳士規定(法的拘束力はないが当事者相互の信義に基づき自発的に履行すべきものとされる約束)を定める方が、なにも定めないよりよいと考えられる場合もあります(かなり微妙な判断になります)。

さらに、本来は決めておいた方が良い事項を決め忘れることも考えられます。

相続に強い弁護士であれば、早めに調停条項案を作成し、調停の進行に合わせ、それを修正して交渉を続けていきます。
専門でない方が調停を行う場合も、せめて、前に書いた正確に記載しなければならない事項、決めなければならない事項を裁判所に提出する書面メモに記載する等して、漏れがないかを確認しつつ、話し合っていくようにしてください。