先日、私の母方の叔母の息子、つまり、私から見て、従兄弟が亡くなりました。
従兄弟は、結婚しておらず、子供もいませんでした。
また、従兄弟の両親も、既に亡くなり、一人っ子でもともと兄弟姉妹もいませんでした。
遺産としては、預金及び不動産があるようです。
また、自分が所有していたS市の自宅から、都心の賃借マンションに移り住み、ここで亡くなりましたが、住民票は、S市の自宅にしたままでした。
結局、私が、借りていたマンション等の明渡や葬儀等も行い、その費用も出しました。
従兄弟は、相続人になれないのは知っていましたが、亡くなった叔父叔母には良くしてもらいましたし、従兄弟とも仲が良かったことから、対応しました。
葬儀等の実費については、請求したいと思うのですが、どうしたらよいでしょうか。
既に、ご存じのように、従兄弟が亡くなった場合でも相続人にはなれません。

相続人になるには、法律上順番が決められていますが、被相続人(遺産を遺して亡くなった方)との関係で、
①配偶者は必ず相続人となるという前提で、
②子供がいる場合→配偶者と子供が相続人
※子供が亡くなった場合は、孫が相続人になります。さらに孫が亡くなった場合はひ孫が相続人となります。
③子供がいないが親がいる場合は→親と配偶者が相続人
④子供も親もいない場合は→配偶者と兄弟姉妹が相続人
※兄弟姉妹が亡くなっている場合は、その子(甥・姪)が相続人になります。

このように、被相続人の従兄弟やおじさん、おばさんは、相続人になりません

本件のように、相続人でない人が、相続人のない(又は相続人がいることが明らかでない)故人の死亡後、故人のためにお金を支出した場合に遺産より弁済を受けるためには、相続財産管理人の選任を管轄の家庭裁判所に申立て、その上で、選任された相続財産管理人より弁済を受ける必要があります。

この場合の管轄のある裁判所は、相続開始地の家庭裁判所ですが、本件の場合、住民票上の住所がある場所はS市であるのに対し、実際に住んでいたのは都内ですが、この場合管轄は、原則として、S市を管轄する家庭裁判所です。

管轄の家庭裁判所に、相続財産管理人の選任審判申立書と添付書類(申立人の利害関係を証明する書類、故人の出生から死亡までの全ての戸籍(除籍・改製原戸籍)、戸籍付票、相続関係図、判っている限りの財産目録等)を提出して、申立てることになります。

その上で、選任された相続財産管理人に対し、債務の存在を立証し、弁済を請求することになります。
ただし、この弁済をうけられる債務の中には、相続財産管理人の選任申立てを弁護士等に依頼した場合の費用は含まれません。

また、相続人でなくても、被相続人と特別の縁故のあった者(特別縁故者)については、相続人の存否が不明で、公告で定められた期間内に相続人である権利を主張する者がなかったは、特別縁故者の請求により、家庭裁判所は,相当と認めるときは,特別縁故者の請求によって,その者に,相続財産管理人が清算後残った相続財産の全部又は一部を与えることができます。

ここで、特別縁故者とは、同居している内縁の妻等に限られず、公表されている裁判例からすると、下記のように多岐にわたっています。
・入院中の被相続人のため,身辺にある唯一の身寄りとして財産上の一切の世話をした叔母
・被相続人と起居を共にし,その財産の維持管理に当たった内縁の夫の養子
・幼少時より絶えず交際し,被相続人の死後は葬儀,納骨,法要を行い,今後も祭祀回向を怠らない意向のある従兄弟
・永年被相続人と同居し,その死後は遺産を管理し,祭祀を行っている祖母の妹の子
・被相続人の依頼により祖先の祭祀を行い,被相続人からその死亡の場合財産は君のものになると言われていたいとこの子 ・被相続人の葬儀を他の者と行い,祭祀を主宰している従兄弟
・六親等の血族関係があり,祭祀を行い,遺産を管理している者
・遺産たる土地上にある家屋に居住し,祭祀を主宰しているいとこの配偶者
・被相続人の看護に努めその死後は祭祀を主宰している甥,姪の子
・被相続人と生計を共にし,その療養看護に努め,その死後は祭祀を主宰し,遺産を管理している叔父 ・被相続人の葬式を行い,かつ,現行民法ならば相続権を有する姪の子である点は「その他被相続人と特別な縁故があった者」に当たるとされた者
・20年近くも音信不通の状態にあった素行不良の被相続人に代って,唯一の遺産を事実上管理してきた従兄弟
・祭祀主宰者に指定された事実上の養子
・被相続人から養育看病を受けていた亡妻の妹の子
・被相続人と永年,特に親交のあった者,
・被相続人のために代金を支出して家屋を購入し,被相続人一家の生計を10年以上援助した被相続人の勤務会社の代表取締役
また、法人にも特別縁故者となる能力があるとされています(以上の裁判例は、長山義彦外著「【新版】家事事件の申立書式と手続」新日本法規 305頁から引用しています。)。