遺産(相続財産)の調査の仕方として、1-基本事項 、2-遺言書の探し方を記載しましたが、ここでは、銀行口座の探し方を記載します。

まずは、被相続人(亡くなった方)の自宅等で、預貯金の通帳を探すことなります
預貯金の通帳が見つかれば、さまざまなことがわかります。
残高により預貯金額が、取引履歴の振込先の名義などで、被相続人の債権者、または、投資先等がわかります。また、自動引落から、どのような債務を負担しているか、生活状況などもわかります

名義だけでは相手方が分からない場合は、Google等でその名義を検索してみることで分かる場合もあります。

通帳が見つからない場合、あるいは、キャッシュカードしか見つからない場合等は、銀行で、残高証明、取引履歴を取得することになります。通帳があっても、現在の残高、過去の取引履歴が十分に分からない場合も、同じ事になります。

まず、被相続人の取引のあった銀行に行き、実際の口座残高を確認することになります
同じ金融機関であれば、どの支店に行っても手続が可能なのが通常ですが、事前に電話等で必要書類とともに、確認した方がよいでしょう

ただし、この手続を行うと必然的に相続人が死亡したことを伝えることになりますので、その金融機関における口座は凍結して引き出せなくなります。この点はご留意ください。

窓口で、残高照会を依頼すると、依頼人が指定した日(通常は、被相続人が亡くなった日)を交付してもらえます(1通数百円の手数料がかかります)。

同じ金融機関の他の支店にも口座を持っている可能性がある場合は、被相続人について、全店照会をお願いしてください。
被相続人がその金融機関で保有している口座とそれらの口座の預け入れ残高のすべてが出てきます、

また、被相続人の生前、没後も含めたお金の動きを確認する必要がある場合は、被相続人の口座についての一定期間(3年、5年、10年等)の取引履歴を取得した方がよいでしょう。

この残高証明書や取引履歴の取得は、相続人全員でなくても、単独の相続人でも、取得できます(最高裁平成21年1月22判決 判例時報2034号29頁)。

ただし、死亡直前に解約され死亡時に口座がない場合に過去の取引履歴については取れないという東京高等裁判所の平成23年8月3日(金融法務事情1935号118頁)の判決があります。
また、遺言書で特定の相続人にその口座が帰属した場合に、他の相続人が取得できるかについては、明確になっていません。
また、10年を超える過去の取引履歴の取得については、拒否される場合がほとんどです

まれなケースですが、単独の相続人が取引履歴を請求したケースで拒否される場合もあるようです。
私が直接受任した事件ではありませんが、2回ほど、聞いたことがあります。その金融機関と他の相続人に取引がある場合や、他の相続人が職員等の場合のようですが、これらの場合は、弁護士に相談いただくことになります

金融機関や支店も分からない場合は、被相続人のクレジットカードや通信販売などの利用明細などを見て、引き落とし口座の手がかりとなる情報が記載されていないかを確認することになります
それでも、被相続人の口座のある金融機関や支店が分からない場合は、基本事項で作成した被相続人の履歴(職歴、居住場所等)等を参考に、可能性のある金融機関に通知を送り、口座の有無を確認していただくことになります。