遺産(相続財産)の調査の仕方として、1-基本事項 、2-遺言書の探し方 、3-遺産の調査-銀行口座の探し方 を記載しましたが、ここでは、不動産(土地・建物)の探し方を記載します。

まず、被相続人(亡くなった人)の自宅で、登記済権利証(平成18年以前に所有権取得の登記が完了した際に法務局から発行されていた書類で、『権利証』と呼ばれているものです。)や、又は登記識別情報通知(登記済権利証に代わり、不動産の名義変更された場合に新たに名義人となる人に登記所から通知される書類(情報)です。)並びに固定資産税・都市計画税の納税通知書、不動産を購入した際の契約書等を探すことになります。

これらの資料には、不動産の地番(登記簿上、一筆の土地ごとにつけられる番号で、住所とは異なるものです。)が記載されています。そこで、この地番で土地・建物の全部事項証明書(登記簿謄本)を法務局で閲覧又は取得し遺産を確定することになります。売買契約書で不動産を購入したことになっていても、その不動産を既に売却していれば遺産にはならないからです。

なお、法務局は、オンライン化されていますので不動産所在地を管轄する法務局まで行く必要はなく、ご自身の最寄りの法務局で取得することが可能です。

これらの資料だけでは、不動産を把握できない場合、銀行等の金融機関の通帳等で、固定資産税・都市契約税等の引落がないかを確認します。ある場合は、その引落の都道府県等を金融機関に聞き、当該自治体に問い合わせることになります(なお、東京都の場合は、管轄の都税事務所に確認することになります。)。

何度か行く等しており、不動産の住所がわかっていても、地番が分からない不動産がある場合は、管轄の法務局のHPをみて、地番の照会の係へ電話して、住所を言って、聞けば教えてくれます

全部事項証明書を取得する際には、共同担保目録付きのものを取って下さい。料金は増えません。取得用紙の共同担保目録付きのところにチェックを入れればいいだけです。共同担保目録というのは、取得した全部事項証明書の不動産と共同に担保(抵当権等)を設定されている不動産の目録です。

銀行等の金融機関は、融資の担保設定の際には、私道にも住宅部分と共同して担保を設定しますので、非課税の私道(非課税の場合は、固定資産税の納付書ではわかりません)についても、共同担保目録により、分かることがありますし、場合によっては、別のところに不動産を持っていることがわかることがあります

私道は、法務局で公図を取得し、被相続人の所有不動産の近くの私道の全部事項証明書を取ることにより、相続財産であることがわかることもあります。

また、他にも遺産としての不動産がありそうな場合は、名寄帳も取得した方がよいでしょう。

名寄帳とは、当該地方自治体の範囲内にある不動産についての所有者ごとの一覧表であり、未登録建物であっても固定資産税の評価を受けているものは、記載されていますし、非課税の土地も記載されています。

特に、一緒に住んでいない相続人の場合で不動産がどこにあるかわからない時などは、不動産がありそうな市区町村の資産税課(東京の場合には都税事務所)に申請して不動産の名寄せ帳を取り寄せることになります

なお、従前は、固定資産税が課税されていない土地(価値のない土地)については、そのまま、相続登記もせずに、放置されることもありました
しかし、このように所有者不明の土地が発生し、災害復興事業への支障などの様々な障害が生じたことから、令和3(2021)年4月、「民法の一部を改正する法律」及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が成立し、同月28日公付され、令和6年4月1日から施行(法律が効力を生じること)されることになっています

この改正の詳しい内容は、後日、記載しますが、この改正により、例えば、不動産の相続登記の義務化
① 相続又は遺贈により所有権を取得した相続人に対して3年以内の登記申請義務
② ①の義務の履行として法定相続登記または相続人申告登記がされた後に遺産分割により所有権を取得した者に対して遺産分割の日から3年以内の登記申請義務及び
③ 正当な理由なく、①又は②の義務に違反すると、10万円以下の過料に処させられること

のように定められました。施行前の相続等については、相続があることを知った時か、施行日(令和6年4月1日)のどちらか遅い方から3年以内にこれらの登記を行わなくてはならなくなりました。

そこで、今後は、固定資産税が課税されない土地についても、キチンと相続登記をしていくことが必要とされてきます。

最後に、遺産である不動産が確定した後も、特に遺産である不動産を購入した際の契約書は、キチンと保存しておきましょう。再取得できないですし、その不動産を売買した場合の譲渡税の算出のための購入価格を立証するために必要で、これがないとある場合と比較して格段に高額な譲渡税を支払わなくなってしまう場合もあります。