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私は、友人のAと東京の下町の一軒家の土地・建物を共有しています。
ただ、お互い年を取ってきたので、この不動産を分割したいと思っています。
このような共有不動産の分割には、どのような方法があるのでしょうか。 -
不動産などの共有物分割の方法としては、大きくいって、①換価分割、②価格賠償、③現物分割という3つの方法があります。①換価分割については、「共有物の分割方法(1) 換価分割とは」で、ご説明したので、ここでは、②価格賠償について、ご説明します。
価格賠償とは、共有物を特定の共有者に帰属させ、この者から他の者に対して持分の価格を支払わせる方法です。
「賠償」といっても、損害賠償とは異なり、単に支払うという意味です。価格賠償は、部分的価格賠償と全面的価格賠償に分けられます。
部分的価格賠償とは、現物分割等の補いや補完として行われるものです。
例えば、共有物が二つの不動産AとBだとすると、Aの価格が1000万円、Bの価格が1500万円の場合、2人の共有者(持分は2分の1ずつ)の片方がAを、他方がBを取得すると、Bを取得した者が取り過ぎになります。
そこで、Bを取得した者がAを取得した者に250万円を支払えば、持分通りに分割できたことになります。全面的価格賠償とは、共有物を共有者の1人の単独所有または数人の共有として、これらの者から他の共有者に対して持分の価格を支払わせる方法です。
部分的価格賠償にせよ、全面的価格賠償にせよ、交渉で、共有物を分割するときに、このような方法が使えることは問題ありません。
しかし、判決で、このような方法を強制することができるかについては、共有物分割を規定した民法258条には、「現物分割」と「競売」しか定められていないことから、過去には問題となりました。しかし、まず、部分的価格賠償が認められ、さらに全面的価格賠償も最高裁判決で認められるようになりました。
この経緯については、本HPの「共有物分割訴訟で、他の共有者の持分を全部買い取る判決は取得することは可能なのか」で、記載しましたので、興味がある方は、読んでいただければと思います。全面的価格賠償を認める最高裁の判決(最高裁平成8年10月31日判決(民集50巻9号2563号))は、特段の事情、つまり、①共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であり、かつ、②共有者間の実質的公平性を害さない場合に、全面的価格賠償を認めるものとしています。
ここで、②共有者間の実質的公平性を害さない場合とは、その共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても実質的公平を害さない場合のことです。
したがって、裁判で、全面的価格賠償を主張する側は、自己に適正価格を支払う支払い能力があることを立証しなくてはなりません。価格賠償の方法で分割するためには、共有物を取得する者に一定以上の支払い能力があることが前提で、その上で、他の共有者の持分に応じた代償金の金額が争点となることが通常です。
ここに価格賠償の方法をとる場合の難しさがあります。話し合いでも代償金の価格で争いになる場合、共有物分割訴訟を行うかどうか迷う場合は、まず、弁護士にご相談下さい。
共有物の分割方法(2) 価格賠償とは
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