私は、兄と二人兄弟でした。
兄は、15年ほど前に、当時10歳の一人息子を残して亡くなりました。
兄嫁も相次いでなくなったため、私の両親は、兄の子(父から見て孫)を父の養子として育ててきました。
母は、10年前に亡くなり、先日、父が死亡しました。
相続人は私と兄の子(私から見ると甥)だけです。
甥は、父の相続について、養子として亡父の遺産を取得するのでしょうか
それとも亡兄の相続分を兄に代わって取得するのでしょうか
兄の子は、①お父様の養子としての資格(相続分)と、②お兄様の息子として代襲相続人としての資格(相続分)の両方の資格で、二重に相続できます。

まず、この場合の養子は、普通養子(養子縁組によって、養親となる者と養子となる者との間に、嫡出の親子関係を作り出す制度)であることが前提です。

普通養子の効果としては、養子縁組の日から、養親(この場合は、お父様)の嫡出子としての身分を取得しますので、お父様が亡くなった場合は、その子として、前記①の資格で相続することになります。

そして、普通養子においては、従前の親子関係(この場合であれば兄の子供としての関係)は、そのまま存続します。
このため、前記②のお兄様が亡くなったことによる代襲相続(推定相続人が被相続人より前に死亡したとき、その者の子等がその者に代わって相続する制度)により相続することになります。

本件の場合、相続人は、相談者と兄の子だけですが、観念的には、相談者:亡兄の代襲者たる兄の子:亡父の養子の兄の子の3つが考えられ、これらの相続分が、1:1:1となりますので、結局、兄の子は、2/3の相続分を有することになります。

特別養子は、実の親との関係を消滅させ、養親との間に実の親子と同様な関係を形成する養子制度ですので、このように二重の資格となることはありません

このように、孫が、祖父の養子と自分の父の代襲相続者という二つの相続の資格を有する場合、そのうちの一つの資格について、相続放棄がある場合、重複する資格に影響があるかという問題もあります。

放棄については、通説は、資格ごとに放棄することを認めていますので代襲相続人として放棄しても養子として相続することができることになります。
この場合は、被相続人が同一ですので、このようなケースは少ないと思いますが、それだけにこのケースの場合は、弁護士に相談することをお勧めします。