先日、母が亡くなりました。
母の相続人は、一番上の姉の私、弟、その下に妹2人の4人姉妹です
父は、15年前に亡くなりました。
母と私は二人で暮らしており、父が亡くなった後、私が働きながら母の面倒を見ていました。
母の遺産は、私が一緒に住んでいた自宅の土地・建物と貯金500万円です。
母が亡くなった後、自宅の金庫の中から、表紙に遺言書という封がされた封筒が見つかりました。
こういう場合は、家庭裁判所で、検認の手続をしなければいけないということをHP「遺言書が見つかったらどうしたらよいか(https://www.kawai-sozoku.com/shigo/20201222-1/)」をみて、検認の手続をしました
検認の手続で、中身を見たところ、母が自筆で「私に母の全財産を相続させる。」と記載しており、日付、署名、捺印がされていました。
また、私が遺言執行者になっていました。
しかし、弟達は、「母親がこのような遺言書を書くわけがない。」等、言って納得してくれません。
今後どのように手続を進めていったら、よいでしょうか。
既に、検認の手続が済み、相続人全員が遺言書の内容を理解されているようでしたら、まず、その遺言書に基づいて、不動産の登記を移転すると共に、銀行口座の解約等を進めることがよいでしょう。
むろん、相続人であるご兄弟の感情を配慮し、また、後記のように、遺留分があることから、移転登記手続等を待つということも考えられますが、その場合、平成30年7月6日の相続法の改正により、下記のようなリスクが生じるようになりましたので、ご注意が必要です(この部分は、2019年7月1日より後に相続が発生した場合に適用されます)。

具体的には、本件の場合、相続人は兄弟4人ですので、法定相続分は、4分の1ずつになりますが、遺言書により、あなた一人が相続することになります。

ところが、まだ、貴方への移転登記がされる前に、他の相続人が自分の相続分を第三者に売却した場合、従前の判例(最高裁平成14年6月10日判時1791号59頁外)は売却した相続人は無権利として、その売却の効力を認めませんでした。
ところが、改正民法899条の2第1項により、遺贈を受けた相続人は対抗要件(登記)がなければ相続を第三者に対抗できないことになり、まだ、登記を移転していない場合は、第三者は売却した相続人の相続分(この場合は4分の1)を有効に取得できることになってしまったのです。
この改正は、相続に関する登記等の対抗要件が迅速に行われるようにするために行われたとされています。

そこで、いままで以上に移転登記を迅速に行うよう努める必要があります

また、本件の場合、ご兄弟には、遺留分(被相続人も遺言等で減額・消滅できない相続人の取り分とでもいうべきもの)があります

遺産全体における遺留分の割合は、① 直系尊属のみが相続人である場合は、被相続人の財産の3分の1で、② それ以外の場合は、被相続人の財産の2分の1です。

本件の場合は、②の場合で、相続人の法定相続分は4分の1ずつですので、個々の相続人の遺留分は、8分の1となります。
そこで、あなたは、他のご兄弟より、遺留分の請求があった場合は、遺産の8分の1を支払う等しなければなりません。

そこで、それを見据えて、早々に話し合いを行うか、または、相手方の遺留分の請求を待って対応するかは、人間関係、事案の落ち着き先等により決めることになるかと思います。

今、話し合いを行うかどうかの判断、遺産の評価の方法、交渉等の仕方等については、弁護士にご相談されることをお勧めします

また、遺言書は、その有効・無効が争われることもあります
このようなことになりそうな場合は、なおさら、弁護士に相談することが必要になります。